前回の記事では、ビデオグラファー眞野が「新郎新婦が式場との打ち合わせで聞くべき5つの質問」をご紹介しました。それは、お二人の想いを形にするための、いわば“準備編”。
今回は視点をガラリと変え、“実践編”として、プロのビデオグラファーである奥村が「結婚式当日、最高の映像を撮るために現場で必ず確認していること」を特別に公開します。
私たちが、その一瞬を最も美しく、最もドラマチックに切り取るために、何を考え、どんな情報を求めているのか。このプロの視点を知ることで、なぜ事前の情報共有が重要なのか、そしてお二人の協力がどれだけ映像のクオリティを高めるのか、より深くご理解いただけるはずです。
確認事項1:撮影ポジション「どこから撮影できるのか?」
奥村:
まず、会場に到着して真っ先に確認するのが、「どこから撮影して良いか」というポジションです。特に、挙式が行われるチャペルは神聖な場所。式場によって「祭壇には上がらないでください」「バージンロードは横切らないでください」といったルールが厳密に定められています。
なぜこれが重要?
撮影できるポジションが限られれば、撮れる映像のバリエーションも当然限られます。例えば、新郎様の緊張した表情を正面から撮りたくても、立ち入り禁止エリアであれば撮ることができません。
この制限の中で、どうすれば最高の映像が撮れるのか。私たちは与えられた条件の中で、瞬時にベストなアングル、ベストなレンズの選択を組み立て直します。
確認事項2:会場の明るさ「会場にはどんな光があるか?」
奥村:
次に確認するのは、会場の「明るさ」です。自然光がどれくらい入るのか、披露宴が始まる時の照明はどれくらいの明るさなのか、お色直しの再入場でスポットライトは当たるのか…。光の量と質は、映像の雰囲気を決定づける最も重要な要素です。
なぜこれが重要?
光を制する者は、映像を制します。例えば、美しいステンドグラスからの光が差し込むチャペル。その光をどう活かせば、お二人が最も神々しく見えるのか。私たちは常に光の方向と強さを読んでいます。
確認事項3:動線「新郎新婦がどう歩くのか?」
奥村:
「新郎新婦が、どこを、どのようなルートで、どれくらいのスピードで歩くのか」という動線の確認も欠かせません。バージンロードを歩く速さ、披露宴会場での歩く順番など、すべてがカメラワークの計画に直結します。
なぜこれが重要?
お二人が歩くスピードに合わせて、私たちもカメラを動かします。歩みが速すぎれば、感動的なシーンもあっという間に終わってしまい、美しいカメラワークをする余裕がありません。逆に、ゆっくりと、一歩一歩を噛みしめるように歩いていただけると、その表情、ドレスの揺れ、ゲストの眼差し…すべてを丁寧に映像に収めることができます。
確認事項4:秒数「扉が開く、そのコンマ1秒に魂を込める」
奥村:
そして、最もこだわっているのが「秒数」の確認です。例えば、披露宴の入場シーン。「BGMが始まってから何秒で扉が開くのか」、そのタイミングを音響スタッフ(PA)やキャプテンに必ず確認します。
なぜこれが重要?
ドラマチックな映像は、音楽と動きが完璧にシンクロした時に生まれます。サビの盛り上がりと同時に扉が開き、お二人の姿が現れる。その瞬間のゲストの歓声と高揚感を、私たちは撮りたいのです。
まとめ
ビデオグラファーは、ただ漠然とカメラを構えているわけではありません。
ポジション、光、動き、そして時間。これらすべての情報を瞬時に分析し、頭の中で何通りものシミュレーションを繰り返しながら、その場、その瞬間の「最適解」を導き出しています。
最高の結婚式を創り上げるために、ぜひ私たちを「チームの一員」として、頼っていただけると嬉しいです。




