「映像が好き」
その想いは、ビデオグラファーを目指す上で最も大切な原動力です。しかし、数多くのプロフェッショナルがひしめくウェディング業界で、その想いだけで仕事を続けていくことはできるのでしょうか。
今回は、cEEで活躍する2人のビデオグラファー、渡辺と奥村に、「“好き”の先にあるプロ意識」について、それぞれの視点から語ってもらいました。
お客様と深く関わる熊本オフィスの渡辺が語る「提案力」。
そして、現場のすべてを俯瞰する神戸オフィスの奥村が語る「観察力」。
二人の話から、一流のウェディングビデオグラファーに求められる、真のプロフェッショナルスキルが見えてきます。
渡辺が語るプロ意識:お客様の人生に寄り添う「提案力」と「傾聴力」
ただの“制作会社”ではなく、結婚式を共に創るパートナーとして
cEE編集部:
渡辺さんは、ビデオグラファーに必要なプロ意識とは何だとお考えですか?
渡辺:
私が大切にしているのは、「提案力」と「寄り添う気持ち」です。熊本オフィスでは、撮影や編集だけでなく、お客様との打ち合わせも担当します。その中で、単に映像商品の説明をするだけではプロの仕事とは言えないと考えています。
cEE編集部:
というと、具体的には?
渡辺:
打ち合わせが始まったら、いきなり映像の話はしません。まずお伺いするのは、「お二人は、結婚式をどんな一日にしたいですか?」ということです。ゲストの顔ぶれ、やってみたい演出、伝えたい想い…。そういったお話をとことん聞くこと(=傾聴力)から始めます。
お二人の結婚式全体のビジョンを共有した上で、時には「こんな演出も素敵ですよ」「以前、こんなことをされて喜ばれたお客様がいらっしゃいました」と、映像以外の部分でも積極的に提案します。
cEE編集部:
なぜ、そこまで踏み込んでお話されるのですか?
渡辺:
現場を誰よりも知っているビデオグラファーからの具体的な提案は、お客様にとって大きな安心感に繋がります。「この人は、私たちのことを真剣に考えてくれている」という信頼関係を築くことが、すべてのスタートなんです。
そうやって心を開いていただいた上で、初めて映像の話をします。すると、お客様は「この人がおすすめしてくれるなら、きっと素晴らしいものに違いない」と、私たちの言葉を真摯に受け止めてくださる。
もちろん、ご予算の都合もあります。無理に高価なプランを押し付けることは絶対にしません。それぞれの商品の良さを誠心誠意お伝えした上で、最終的にはお二人の想いを尊重します。大切なのは、売上ではなく、お二人が心から納得して、「この映像を頼んで本当に良かった」と思ってもらえること。
技術的なスキル以前に、お客様の人生最高の日に深く関わるパートナーとして、どこまで寄り添えるか。それが、ウェディングビデオグラファーのプロ意識の根幹だと、私は信じています。
奥村が語るプロ意識:最高の瞬間を創り出す「観察力」と「盤面を読む力」
視野を広く持ち、見えない“次の一手”を読む
cEE編集部:
奥村さんが考える、ウェディング業界で必要なプロ意識とは何でしょうか?
奥村:
僕が思うプロ意識は、目の前の出来事をただ追うだけでなく、あらゆる物事に興味を持ち、先を読む力です。言うなれば、結婚式という盤面全体を把握する「観察力」ですね。
cEE編集部:
盤面を読む力、ですか。もう少し詳しく教えてください。
奥村:
例えば、撮影現場に入ったら、僕は常に光の動きを読んでいます。「太陽は今あそこだから、数分後には光がこう差し込んでくる。だから、このアングルから撮れば、最高の逆光シーンが撮れるな」というように。
また、結婚式は多くのスタッフが関わるチーム戦です。サービススタッフ、司会者、音響、そして写真のカメラマン。彼らが今、何をしようとしているのか、次にどう動くのかを常に観察しています。
「あ、今あのスタッフが動くと、僕の撮りたい絵に被ってしまうな。そうならないためには、どう立ち回ればいいか」
「写真のカメラマンとアイコンタクトを取って、お互いがベストなポジションで撮影できるように連携しよう」
そんな風に、現場にいるすべての人間の動きを予測し、コントロールしていく。まるで詰め将棋のように、二手先、三手先を読みながら、自分が最高の映像を撮るための最適な状況を、自ら創り出していくんです。
cEE編集部:
それは、経験を積むことで身についていくスキルなのでしょうか。
奥村:
そうですね。過去の失敗から学ぶことも多いです。「あの時、あの人がいなければもっと良い絵が撮れたのに…」という悔しい経験が、観察眼を養ってくれます。
新郎新婦という主役を撮るのは当たり前。その主役を、いかに最高の環境で、最高の光の中で、最高の背景と共に撮れるか。そこにまで気を配れるかどうかが、プロとアマチュアを分ける大きな差だと思います。“映像が好き”という気持ちに、この「最高の瞬間を自ら創り出す」という能動的な姿勢が加わって、初めてプロの仕事になるんです。
編集後記
お客様の心に深く寄り添う渡辺さんの「提案力」。
現場のすべてを支配する奥村さんの「観察力」。
二人のビデオグラファーが語るプロ意識は、アプローチこそ違えど、「お客様に最高の映像を届ける」という一点で繋がっていました。
「映像が好き」という情熱を燃料にしながら、それをプロの仕事へと昇華させるための+αのスキル。cEEのビデオグラファーは、技術だけでなく、人間力をも磨き続けることで、お客様の一生に一度の瞬間を、最高の形で映像に刻みつけています。


