結婚式という、人生で最も輝かしい一日。
その一日を永遠の記憶として映像に刻むのが、私たちcEEのビデオグラファーの仕事です。これまで数え切れないほどの幸せな瞬間に立ち会ってきましたが、その中には今でも鮮明に思い出せる、特別な緊張感に包まれた一日があります。
今回は、cEEのベテランビデオグラファーである前畑に、プロとしてのキャリアの中でも「一番緊張した」と語る結婚式について、その舞台裏を詳しく聞きました。
緊張の理由は「トラブル」ではなかった
cEE編集部:
本日はよろしくお願いします。早速ですが、前畑さんが経験した「一番緊張した結婚式」について教えてください。
前畑:
よろしくお願いします。そうですね、「緊張した結婚式」と聞いて、まず思い浮かぶのは何かしらのトラブルがあった現場なんです。例えば、準備段階で機材に不具合が見つかったとか、こちらの連携ミスがあったとか…。それをどうにかして巻き返さなければいけない、というプレッシャーの中で現場に入ることは、正直に言うと時々あります。
でも、今回お話しするのは、そういったトラブルが原因ではありません。お客様とのやり取りの中で、純粋に、そして最高レベルに緊張した結婚式なんです。これを超える緊張は、今のところ経験していませんね。
「僕たちの願い、叶えてもらえますか?」すべての始まり
お二人の想いを形にするため、じっくりと時間をかけてお話を伺います
cEE編集部:
お客様とのやり取りで、そこまで緊張するというのは、一体どんな状況だったのでしょうか?
前畑:
ひと言で言うと、ものすごくこだわりの強いお客様でした。
事前情報として、「お花屋さんや他の業者さんも、新郎新婦様のイメージと合わないという理由で、次々に変わっているらしい」と聞いていました。当然、私たちcEEが担当するビデオ、特に当日上映するエンドロールへのこだわりも相当なものだろうと。正直、かなり構えて打ち合わせに臨みました。
そして最初の挨拶のとき、新郎新婦様から開口一番こう言われたんです。
「僕たちの願いを、叶えてもらうことはできるんですか?」と。
その真剣な眼差しに、こちらも生半可な気持ちでは応えられないと感じました。だから、私も腹を括ってこう返したんです。
「もちろんです。私たちは、お二人の願いをすべて叶えるつもりで来ました。その代わり、お二人にも完璧に協力していただきます」と。
その言葉で、お互いの覚悟が決まった気がします。事前にプランナーさんには「今日の打ち合わせは長くなるので、退社時間を過ぎても待っていてください」と伝えていたのですが、その予想をはるかに超え、打ち合わせは6時間にも及びました。
5分間の楽曲に込められた、秒単位のディレクション
cEE編集部:
6時間!具体的には、どのような打ち合わせをされたのですか?
前畑:
お二人がエンドロールで使いたい曲は、絢香さんの5分ほどの楽曲でした。その5分間の中に、お二人の想いがびっしりと詰め込まれていたんです。
「この曲の、このサビの、この歌詞の瞬間に、この絵を入れたい」
「ここの間奏1秒目には新郎のこの表情、2秒目には新婦のこの表情を」
といった具合に、1秒、2秒単位で入れるべき映像がすべて決められていました。 しかも、それは新郎新婦お二人だけのシーンに限りません。「ここでおばあちゃんが涙ぐむ表情を入れてほしい」「ここでは友人のこのグループが笑っているところを」と、ゲストのリアクションまで細かく指定されていたんです。
これはもう、映像制作というより、ひとつの映画を撮るような感覚でしたね。私たちは、その5分間のイメージを完璧に実現するために、撮影時に新郎新婦様にお願いする表情や動き、目線の一つひとつまで、すべてその場で決めていきました。
ブレが許されない「一発撮り」のプレッシャー
一瞬の輝きも逃さないよう、全神経を集中させます
cEE編集部:
結婚式当日は、まさにイメージ通りの撮影をされたわけですね。
前畑:
その通りです。ただ、ご存知の通り、結婚式はライブです。何が起こるかわからない「ゲリラ撮影」のようなもの。リハーサルもリテイクも基本的にはできません。
ここまでガチガチに構成を固めてしまうと、逆にほんの少しのズレも許されないという、とてつもないプレッシャーが生まれます。
当日のカメラマンには、撮ってほしい絵のリストをびっしりと書き出して共有しました。彼女はそれを見て、一瞬たじろいでいましたけど(笑)、「一緒にやろう!」と協力してくれました。
特に大変だったのは、挙式や披露宴の進行中のシーンです。例えば、「新郎新婦が入場して歩いている時、二人の指輪にフォーカスしたカットを撮り、それが後の誓いのシーンにリンクする」といったディレクションがありました。つまり、一発勝負のその瞬間に、絶対に指輪のカットを撮り逃がすわけにはいかないんです。
私はその日、編集担当として現場に入っていましたが、万が一カメラマンが撮り逃した時のために、自分でもカメラを準備していました。「何かあったら、自分が撮りに行く」という覚悟でしたね。
緊張の先にあった、最高の「ありがとう」
cEE編集部:
想像を絶する緊張感ですね…。結果として、映像はご満足いただけたのでしょうか。
前畑:
なんとか、すべて撮りきって形にし、上映することができました。上映後、新郎新婦様にご挨拶に伺ったのですが、お二人とも慌ただしくされていて、少ししかお話しできず…。正直、「本当にこれで良かったんだろうか」と、感想を伺うまでずっとドキドキしていました。
後日、お二人からお手紙をいただいたんです。そこには、こんな言葉が綴られていました。
「最初は、私たちの想いが強すぎて、こんなことを映像にするなんて無理なんじゃないかと思っていました。でも、前畑さんとの長い打ち合わせの中で、この人なら絶対に形にしてくれると確信に変わりました。完成した映像を見た時、私たちの想いがすべて叶えられていて、本当に感動しました」
この手紙を読んだ時、心の底から「この仕事をしていて良かった」と思いました。あの凄まじい緊張感も、すべてが報われた瞬間でしたね。あのお客様と関われたことは、私のキャリアにとって大きな財産です。仕事の醍醐味を、改めて教えていただいた気がします。
「こだわり」は、私たちの原動力
この経験を通して、前畑さんは「こだわりの強いお客様」に対する考え方が変わったと言います。
前畑:
一見、大変そうに聞こえるかもしれませんが、お客様の想いが強いということは、私たちが目指すべきゴールが明確だということなんです。むしろ難しいのは、「お任せします」と言いながら、言葉にならないイメージをお持ちのお客様。その想いを汲み取る方が、実は大変だったりします。
だから、「こだわりが強いんです」というお客様に出会うと、私たちはワクワクします。そこに全力で振り切っていいんだ、という安心感と、それを超えていきたいという挑戦心が湧いてくるんです。
cEEは、そんなお客様一人ひとりの「こだわり」や「わがまま」を、最高の形で映像にすることに、何よりのやりがいを感じています。
もし、あなたが結婚式の映像に特別な想いをお持ちなら、ぜひ私たちにその話を聞かせてください。どんなに些細なことでも構いません。あなたの「願い」を叶えるために、私たちは全力を尽くします。





